2014年10月25日,フィリピンのミンダナオ島ダバオ市のValues School で開催された「APSA Science Seminar/Workshop」(主催はフィリピンのNPO法人Asian Psychological Services and Assessment Inc.)で,生物教育研究所所属の二人のサポーター中道貞子氏と片山舒康氏が,講師をされました。このセミナー・ワークショップは上記のNPO法人が不定期に開催する事業で,生物教育研究所が協力を依頼されています。今回は,ダバオ市内の私立小学校教員を中心に22名の参加がありました。
午前中は中道氏の指導による「顕微鏡の使い方」および「細胞の顕微鏡観察」の実習が行われました。準備された顕微鏡は5台のみだったので,単に顕微鏡の使い方や観察の指導だけでなく,生徒の指導法にも焦点を当てた講習となりました。参加者の多くは顕微鏡を使った経験のない教員でした。一方,マニラ市内の大学で学ぶダバオ出身の学生の参加があり,彼女がスマートフォンを使って顕微鏡写真を撮影すると,他の受講者たちも,自分のスマートフォンやiPadを使って写真を撮り始めるという一幕もありました。
午後は片山氏による「消化酵素-唾液アミラーゼ」の講義と実習が行われました。参加者は消化と吸収についての短い講義を受けたのち,唾液によってデンプンが次第に分解されていくようすをヨウ素反応の色の変化で確認しました。試験管やビーカーも不足していましたが,プラスチックコップなど身近にあるものを代用することで実験は実施され,参加者たちの「自分の学校でも実験をしてみよう」という意識を高めるのに役立ったものと思われます。
なお,フィリピンでは2012年度から新しい教育課程が年次進行で施行されており(学会誌「生物教育」54巻1号参照),理科では実験・観察を通した学習が強く望まれています。今回のセミナー・ワークショップのテーマ「顕微鏡観察」は第7学年(中学校1年生),「消化酵素」は第8学年(中学2年生)の内容です。
顕微鏡観察実習に取り組む参加者たち
消化酵素の実験の説明を聴く参加者たち