三浦半島南部、京急の三崎口駅から10分ほどの所に神奈川県最大規模の低地性湿地「北川湿地」があった。そこでは初夏の夜、人知れず月明かりにハンゲショウの白い葉が浮かび上がり、無数のヘイケボタルが」プラネタリウムのように幻想的な光の明滅を奏でていた。
この本は、北川湿地が40年以上も前の昭和の時代の開発計画によって、最近無惨にも残土処分場となり果てたことへのレクイエムであり、湿地の埋め立てを何とか防ぐことはできないかと活動した私たち市民の記録でもある。(「はじめに」より)
内容は3部構成になっている。第1部「在りし日の北川湿地」で保全生物学的にみた北川湿地の重要性を植物・動物それぞれからみた特徴を挙げて説いている。第2部「失うまでの日々」では、北川湿地を残土処分場とする計画が勃発してから、湿地の埋め立てを防ぐための活動、そして結果として湿地が埋め立てられてしまった経緯が述べられている。第3部は資料編で「三戸地区エコパーク構想」「年表」「保全上重要な生物種リスト」及び裁判記録などが掲載されている。