一般社団法人 日本生物教育学会|The Society of Biological Sciences Education of Japan [SBSEJ]

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お知らせ

2018年12月17日

大学入学共通テスト(新テスト)の試行調査についての意見書

カテゴリ:

平成30年12月13日

独立行政法人 大学入試センター 御中

一般社団法人 日本生物教育学会



大学入学共通テスト(新テスト)の試行調査についての意見書

 

 

一般社団法人日本生物教育学会は、幼稚園教諭から、小学校・中学校・高等学校の教諭、大学教官等からなる団体で、生物教育に関わることに広く研究を行っている団体である。これまでの大学入試センター試験の結果についても意見を要請され、回答を行ってきている団体である。
今回、本学会員で高等学校に所属する方の中で、理事・監事等からの推薦を受けて優秀な高等学校教員が選出された。その被推薦者(37名)により「大学入学共通テスト問題検討ワーキンググループ」を立ち上げて、主として「問題のねらい」の「主に問いたい資質・能力」のうち「思考力・判断力・表現力」に関してそれが適切だったかどうかについて分析を実施した。
そこでの分析を踏まえ、下記の1~3の3点にまとめたので、意見書として送付することとした。



1 今回のプレテストの各問の問題のねらいが反映されているかどうかという点について

①直接的に知識を問う問題が少なく、知識の活用能力を問う問題が多く、概ね問題のねらいを達成している問いが多かった。
→公表された「問題のねらい」に照らして、各問いが「十分合致する」「おおむね合致する」「合致しない」の3段階で評価を行った。【資料】に示したとおり、「問題のねらい」に即した問題と評価されるものが多かった。だだし、生物基礎の第2問の問2(問題番号8・9)と生物の第5問のA問3については、「合致していない」とする評価(それぞれ46%、49%)が多かった。

②観察実験の推進につながる技能の問題(生物基礎の第1問)はとてもよいと感じた。
→また、「課題の設定」「実験結果の予測」「結果からの分析」などを問う問題がバランスよく出題されている。
③日常生活から題材を選択したり、会話を用いたりして受験生の興味を喚起していることがよい。
④探究の過程を意識していることが伝わってくる出題であった。

一方、課題や不安材料として
①思考や判断を要する出題のため、受験生の解答に対する時間の不足が懸念される
→十分な時間をかければ正答できる受験生であるにもかかわらず、時間不足のために「思考力・判断力・表現力等」が不足していると認識されてしまうのは、問題があるのではないかという指摘がされている。「生物」であれば、80~90分ぐらいは必要ではないか。考える時間が十分に確保されないのであれば、「思考力・判断力・表現力等」の試験と言ってよいのか疑問が残る。
②「生物」に関連する科目が敬遠されることが懸念される
→生物に関する出題は、他の理科の科目に比べても文章量も多く、また教科書に掲載されていない題材での出題も多くなる。結果として、問題の質も高く、思考力・判断力・表現力等の把握には優れていても、結果として受験生には得点しづらい科目として敬遠されてしまうのではないかという不安が指摘されている。
③冗長な対話文は避けるべきである
→受験生に主体的に問題に取り組ませる上でも対話文は役立つがそもそも思考に時間を要することを考えると冗長な対話文は避けるべきである。
④「過不足なく答えよ」「間違いを含むものを答えよ」などの問いは極力避けるべき
→受験生の弁別という用途もあるので仕方ない面はあるが、上記のような問いはうっかりミスとか勘違いとかによる失点を招く可能性が高く、本来の生物に関する本質的な能力をみていない可能性がある。


2 問題に対する個別具体的な指摘について

<生物基礎>
1-問2(2) 実際に顕微鏡を操作していることがわかる問題で斬新である。ただし、考えるための情報をコンパクトに与えた上で考察させるのがよいのではないか。
1-問3(3) 対照実験の考えが身についているかどうかを測るよい問題である。実験結果がどうならどういえるのかというのを選ばせる問いがもう1問あるとさらによいのではないか。
2-問2(8・9) 知識で対応できてしまうことも考えられ、肝小葉の細かな構造を覚えることにつながりかねない。思考だけで解答するなら、もう少しヒントなどが必要である。
2-問5(12) 学習内容を日常生活と関連付けようという意図がわかるよい出題である。
2-問6(13) 抗体に対する抗体という発想は受験生にはすぐに出てこない発想である。
3-問3・問4(17・18・19) 知識を活用して思考させる問題となっている。
なお、ジェンダー関連として、掲載されている会話部において、「疑問を感じる男子、それに応じる知識をもった女子」という固定した構成になっているのではないかという意見もあった。

<生物>
1B-問3 走りながら考えたという設定は不自然でやや無理がある。
2A-問3 仮説検証のための計画を考えさせるもので、従来あまり見られない出題形式であるが、望ましい出題と考える。
2B-問7 基礎的な知識をもとに考察させる問題でよい。
3-問4 チョウの胸部の第2体節と第3体節に付属している翅は形態が異なる。ハエの変異体の翅の形態が同じものと同様に考えていいのかどうかの根拠が受験生には示されていない。また、問4は、問3と解答で連動しているように感じた。
4-問3 「根拠を見いだすことができる」の問題は、判断を支える適切な事実または支えることにならない事実を選択させるなど、証拠となる事柄を受験生が判断できているかどうかを問うようにするとさらに適切になると感じた。


3 その他の提案について

理科の実験や観察に関する出題を文章で作成する場合、実験や観察の条件を丁寧に書き込んでいく必要が出てくる。また、その条件で本当にその実験結果がでるのかなど、結果の信憑性や再現性を問われることも多い。その点、CBT調査を実施した場合、映像により実験までの概要を示したり、結果を示したりすることで、この2つの課題をかなり解決できる。また、文章の読み取りが苦手だったり、読み取りに時間がかかったりする受験生も情報量の多い映像を視聴する場合は、読解力ではなく、理科本来の思考力や判断力で問題に取り組むことが可能となる。
このような観点から、理科の場合、CBTによる映像調査はかなり有効なことが見込まれるため、大学入学共通テストにおいて早急に試行・実現していくことが望まれる。
また、新テストもこれまでの大学入試センター試験と同様、基礎的な資質・能力を把握するテストとの位置付けであるなら、上位科目である「生物」が入試科目にあること自体が高等学校の現場を圧迫することにつながる。3年次に履修した科目の全範囲を新テストの時期までに指導するのはかなり困難である。
さらに、「生物」を履修していると明らかに「生物基礎」が有利になるような出題は極力さけるべきである。これも技術的に難しい部分があるのは承知しているが、「生物」における知識があることで、「生物基礎」が思考でなく知識で解決してしまうような問いは避けるべきであると考える。



【資料】
Webページ上に示された「問題のねらい,主に問いたい資質・能力及び小問の概要等」を参照して、「問題のねらい」のうちの「思考力・判断力・表現力」に照らして、各問いが「十分に合致する」か「おおむね合致する」か「合致していない」かについてワーキンググループの各メンバー(37名)が判定した結果を集計したのが以下の2つの表である。

 

 

<生物基礎>

newtest_01.png

<生物>

newtest_02.png

 

 

平成30年度大学入学共通テスト(新テスト)の,問題,正解表,問題のねらい、主に問いたい資質・能力及び小問正答率等,作問のねらいとする主な「思考力・判断力・表現力」についてのイメージ等は,下記からダウンロードできます。

平成30年度大学入学共通テスト 問題、正解表等