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お知らせ

2018年5月24日

大学入学共通テスト(新テスト)のプレテストについて,大学入試センターに意見書を提出しました。

カテゴリ:

平成30年3月30日
独立行政法人 大学入試センター 御中

一般社団法人 日本生物教育学会

 

 

大学入学共通テスト(新テスト)のプレテストについての意見書

 

 

一般社団法人日本生物教育学会は、幼稚園教諭から、小学校・中学校・高等学校の教諭、大学教官等からなる団体で、生物教育に関わることに広く研究を行っている団体である。これまでの大学入試センター試験の結果についても意見を要請され、回答を行ってきている団体である。
今回の大学入学共通テストに直接に関与する高等学校の先生方、大学の教官の会員も少なくないことから、別紙のようなアンケート調査を本学会の「大学入試センター試験分析委員会」分属の会員と理事及び監事に送付し回収して、プレテストに意見を述べることとした。

 

 

1 今回のプレテストはねらいが反映されているかどうかという点について

今回のプレテストは、ねらいを反映していると基本的には高評価であった。
・学んだことをいかに使うかということを重視しており,たいへん良いと思う。
・①探究という文脈が多くの問題で取り入れられている,②図,表,グラフの読解と分析を重視している,③推論の合理性を評価しようとしているという3点において,これからの学校教育において強調したい観点が表れていた。
などの意見が寄せられている。
一方、課題や不安材料として
・実験結果などから思考力や判断力を問う問題はどうしても文が長くなったり,多くの実験結果を提示したりせざるを得ない。これは宿命ともいえるが,できる限り簡潔な問題文にするよう今後も努力して欲しい。
・問題文が長くなると,理科の出題というよりは文章の読み取り能力の差を測定してしまうことになる。急に導入することはできないと思うが,コンピュータによるCBT調査として,文章の代わりに実験の映像を流して,その映像から様々な問いに解答するようになると試験は大きく変わると思う。
・課題の把握→探究→解決の順になっていない大問がほとんどかと思います。これらに関する生徒の力を評価するのであれば,この順番に沿った問題作りをする方が妥当かと思う。
などが主な意見として寄せられた。


2 今回のプレテストの①問題構成,②設問数,③内容,④難易度等について

①問題構成、③内容については,バランスがとれているという意見が多く、暗記した事項を答えさせるような問題はほぼ皆無で,実験結果から推察するなどよく工夫されているといった意見が代表されるものである。
ただし、④難易度については、やはりかなり高く、時間内に解答することは生徒に困難と感じている回答も多く、その意味では②の設問数を減らすことも検討の必要があるのではないかという意見もある。また、ある程度大学側の観点からすれば、問題の弁別力が高くないとみんなができない、みんなができてしまうだと、問題の価値が下がってしまうという意見もあった。さらに、前述の1の項目と同様、「今回のようなテストを目指すと,問題における情報量が多くなり,解答時間が十分ではなくなる可能性が高くなる。また,文章表現によっては誤解を招くこともあるので,問題量を減らし,文章表現をより適切にするような改善が必要になると考えられる。データの読解・文章の読解を苦手とする生徒にとっては難易度が高かったと思われる。」といって意見も寄せられている。
総じていえば、ほとんどが思考を要する問題だったので,難易度はかなり高くなっている。問題数を減らしてじっくり考えてもらうか,思考力を問うが平易な問題も入れていくことが必要であろう。


3 問題の選択について

理科の中でも「生物」については、問題の選択は重要な問題であり、記述量の多い意見が寄せられた。基本的な意見としては、回答のほとんどが選択は必要でないというものである。受験生の負担を減らしたいという思いは共有できても、その方法は「生物」の場合、問題の選択ではなしえないということである。
その理由の代表的なものは、以下の通りである。
・選択問題間の難易度の差ができてしまう心配が常にある。
・「現行のセンター試験と同様,問題の分野選択はありません。」とあるが,現行のセンター試験においては,「問題の分野選択」はないものの,選択問題が設定されている。選択問題については,現行教育課程のセンター試験で「生物」が試験科目に加えられることが発表された際に,高等学校教員から「学習内容が多くてセンター試験までに教科書の範囲すべてを履修できない可能性が高い」という意見も取り入れて設定されたと思われるが,現状では必答問題で教科書のすべての分野が出題されており,選択問題は当初の要望に沿ったものとはなっていない。その結果,生徒はどちらの問題に解答するかを迷ったり、とりあえず両方解いたりしてしまうため、逆に負担増となっている。
・平成10年版学習指導要領の「生物Ⅱ」の時は分野選択だったので,分野選択が必要だったが,現在ではすべてを学ぶために,分野選択はしないほうが良いと思われる。選択問題を2つ見てどちらが良いか考えるのも一つのテクニックであり、これは「生物」という科目の本質的なものではないので,避けた方が良い。
なお、次のような意見もあった。
既定の単位数で授業を行えば,年度途中のセンター試験の時期までに全範囲終了するのは不可能なので,分野選択で出題範囲を狭めて欲しいという思いはある。しかし,学校によって指導の順番も異なることから,現状では全範囲出題にするしかない。選択以外で生徒の負担を軽減する方法があれば良いと思う。


4 その他

問題作成は非常に難しく大変であり、長年続けるうちに出題できる内容が枯渇してしまわないか心配であるという意見が多く寄せられた。現行のセンター試験よりも図や表を見て考える問題が多く,教科書や授業を大きく変える必要があると感じたという意見もある。このような出題にすぐに学校現場が対応できるのか心配であるという意見もあった。現行の大学入試センター試験から徐々に思考問題を増やしていき,このプレテストのような問題に移行していくのがよいのではないか。

 

 

 

平成29年度大学入学共通テスト(新テスト)の,問題,正解表,問題のねらい、主に問いたい資質・能力及び小問正答率等,作問のねらいとする主な「思考力・判断力・表現力」についてのイメージ等は,下記からダウンロードできます。

平成29年度大学入学共通テスト 問題、正解表等

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