21世紀は「遺伝子の世紀」ともいわれ、遺伝子や遺伝の基礎知識は、教養として不可欠であるにもかかわらず、得られた生命科学の知見や生命に関わる技術の進歩を受け止める社会の体制はいまだ整っておらず、一般の人が学ぶ場は用意されていない。また、高校生物の教科書において記載されているヒトの遺伝の内容は乏しい。教える側も、倫理的扱いの難しさと、生徒の中に当事者がいて生徒を傷つけてしまうことへの危惧・懸念から、積極的に教えないことが多いようである。しかし、正しく教えなければ遺伝に関する「偏見と差別」が生まれる。きちんと教えることなくして「共生社会」への理解が深まることはないだろう。
そうした現状を危惧して著者の4人は、「遺伝を知ろう、市民の会」のメンバーとして活動をしてきた。そして、ヒトの遺伝を中心にした「教養のための遺伝学の入門書」を作りたいと考えていたところに、本書の執筆の話があり、本書が誕生した。本書はイラストを豊富に載せ、専門用語はなるべくやさしく解説し、一般の人にも広く読んでもらえるよう配慮されている。(「はじめに」より)