淡水にすむ大型の甲殻類の保全について,日本で初めて書かれた総合書。日本図書館協会選定図書。
本書は,第一線で活躍する国内の研究者が執筆した信頼性の高いものである。また現場に精通した技術者が実体験に基づいた実務を多数紹介している。
世界と国内のエビ・カニ類の検索表,専門用語の解説があり,国内の全種については分布域も紹介され(レッドリストとの対照もされている),ヌマエビ科幼生の検索表もある。主要種の解説もあるので,専門家ばかりでなく,淡水のエビ・カニ・ザリガニ類に興味をもつ初学者や,技術者にとっても必携の書である。外来ザリガニ類を教材とした環境教育についても紹介されている。
甲殻類研究の歴史,漁業や食文化についても紹介され,「エビ・カニ・ザリガニ好き」も楽しく読める,手元に置きたい1冊になる。
国外執筆陣も充実し,日本の淡水甲殻類相と関連が深い豪州,日本に隣接する韓国とロシア極東域の淡水産エビ・カニ・ザリガニ類の紹介もされている。謎の多かった隣国の実情を載せた貴重な1冊でもある。