2016年11月12日,神奈川県川崎市の日本女子大学人間社会学部教育学科の学生を対象にした講義(依頼者:加藤美由紀氏)に,講師としてサポーターの岡﨑真咲氏(順天堂大学)が委嘱されました.「小学校理科授業における がん教育」をテーマに,「がん」を教材としたアクティブ・ラーニング型(学習者の能動的,協働的な参加を取り入れた教授・学習法.次期学習指導要領改訂の核とされる)の理科授業実践に,大学生33名が参加しました.教員養成課程の学生が,アクティブ・ラーニングの手法を取り入れた「がん」に関する授業を体験・学習することにより,児童の学習活動を重視した授業の構築への意欲,及び健康に対する関心や正しい知識を持たせること,また,これらの学びや手法を今後の理科教材研究等にも活かすことを目的としました.
今回の授業では,学生が小学校第6学年理科「人のからだのつくりと働き」の指導内容を学習した後に,同学生を対象に「がん教育」の授業(90分)を行いました.現行の学習指導要領では,「がん教育」は,主に保健体育科で行われていますが,理科教育においても「人の体のつくり」と関連させ,健康について考えていくことは重要であると思われます.
また現在,アクティブ・ラーニングによる授業実践が推進されていることから,アクティブ・ラーニングの形態であるジグソー法(グループでの話し合いの手法:関わり合いを通して一人一人が学びを深める)及びポスターツアー(グループで話し合った内容をポスターにまとめ掲示し,質疑応答を行う)の授業を実践しました.
はじめに,学生は「がん」についての知識習得を,講師自身の作成したスライドや動画の活用により行いました(約20分).次に,ジグソー法を用いた手法を実践する為,5,6人のグループを5つ編成し,各グループで,「児童に,どのようなことを学ばせたいか」を討論しました.20分ほど話し合ってから,話し合った内容をポスター(静電気シートフィルム)にまとめ,ポスターを壁や窓に貼りました.その次に,元の各グループ内のメンバーに1~5まで番号をつけ,新たに1番同士,2番同士・・・をまとめて1つのグループとするというように新たなグループを再編しました.その後,各ポスターの前に新たなグループが集まり,5分という時間の中で,自分が所属していた元のグループのポスターについて発表し,質疑応答を行いました.5分後に,次のポスターに移動し,移動したポスターについて今度はそのポスターを作成したグループメンバーが発表し,さらに質疑応答を行いました.このように全部のポスターを回った後,新しいグループは解散して最初のグループ編成に戻り,ポスターツアーで質疑応答した内容を報告しあい,質疑応答の内容を共有することによって,理解を深めました.この方法にはグループメンバー全員が発表の機会を持てること,発表は少人数に対して行われるので内容が伝わりやすいことなどの利点があると思われます.
学生の中には,家族など身近にがんを患った人がいる学生や,日頃ニュースでがんと闘う人々の話題に関心がある学生なども多く,我が国のがんの情報や基本的な知識を積極的に学ぼうとする姿勢が見られました.
主催者からは,「がんのような国民にとって深刻な病を取り上げた学習活動を体験することは,これまで教員養成課程では行われていなかった.学校におけるがん教育の必要性が期待される中,がんに関する専門知識をもつ外部専門家と連携し,児童の学習活動を重視したアクティブ・ラーニング等の手法を用いた授業を体験することは,教員を目指す学生にとって意義のあることでした」との評価が得られました.また,受講者からは,「がん細胞の増殖は自分の体でもじゅうぶんおこりうることが分かった」「がんについてもっと深く学びたい」「児童に伝える機会があった時に,資料を作ったりして教えたい」などの感想が寄せられました.
「小学校理科授業における がん教育」の講義を聞く学生
ポスターツアーで質疑応答する学生
ポスター内の数字5は,最初に編成したグループの班番号,
集まっている学生は新しいグループのメンバー